改正貸金業法の解説とその影響

改正貸金業法の概要の説明

平成18年10月31日に第165回臨時国会に提出され、平成18年12月13日に成立、12月20日に公布された「改正貸金業法」について説明いたします。

改正貸金業法の骨子は以下の5点です。

  • 金利体系の適正化
  • 過剰貸付の抑制
  • 貸金業の適正化
  • 多重債務者問題に対する政府を挙げた取り組み
  • 法律の経過措置

順番に概要を説明していきます。

金利体系の適正化

1.上限金利の引下げ
・ 貸金業法上の「みなし弁済」制度(グレーゾーン金利)を廃止し、出資法の上限金利を20%に引下げる(これを超える場合は刑事罰を科す)
※ 利息制限法の上限金利(20%〜15%)と出資法の上限金利(20%)の間の金利での貸付けに ついては、行政処分の対象とする。

利息制限法の上限金利は、元本が10万円未満の場合20%、元本が10万円以上100万円未満の場合18%、元本が100万円以上の場合15%となっています。元本が100万円以上なのに、18%などの貸付けを行うと行政処分の対象となるという意味ですね。

2.金利の概念
・ 業として行う貸付けの利息には、契約締結費用及び債務弁済費用も含むこととする(ただし、公租公課・ATM手数料を除く)
・ 貸付利息と借り手が保証業者に支払う保証料を合算して上限金利を超過した場合、超過部分につき、原則として、保証料を無効とし、保証業者に刑事罰を科す

3.日賦貸金業者及び電話担保金融の特例の廃止

改正前の貸金業法では、利息制限法1条1項の制限利息を超えた超過部分(グレーゾーン金利)も債務者が任意に支払った場合は、一定の要件の下で有効な利息の弁済とすることとしていました。これが「みなし弁済」と呼ばれるものです。改正貸金業法は「みなし弁済」制度を廃止しました。

過剰貸付の抑制

1.指定信用情報機関制度の創設

・ 信用情報の適切な管理や全件登録などの条件を満たす信用情報機関を指定する制度を導入し、貸金業者が借り手の総借入残高を把握できる仕組を整備する
※ 指定信用情報機関が複数の場合、相互に残高情報等の交流を義務づける

2.総量規制の導入

・ 貸金業者に借り手の返済能力の調査を義務づける(個人が借り手の場合には、指定信用情報機関の信用情報の使用を義務づけ)
@ 自社からの借入残高が50万円超となる貸付け、又は、
A 総借入残高が100万円超となる貸付けの場合には、年収等の資料の取得を義務づける

・ 調査の結果、総借入残高が年収の3分の1を超える貸付けなど、返済能力を超えた貸付けを禁止する
※ 内閣府令で売却可能な資産がある場合などを除く予定。

改正貸金業法の完全施工後は、多額のキャッシングをする場合は源泉徴収票などの年収を証明する書類が必要になり、また、キャッシング総借入額が年収の1/3に制限されます(総量規制)。そして、専業主婦(主夫)の方は、一人ではキャッシングができなくなります。専業主婦の方がキャッシングをする場合は、配偶者の年収を申告する必要があり、夫婦関係を証明する書類、配偶者が借入を行うことを同意したことを証明する書類、その借入で信用情報が照会されることに対する同意書も提出する必要が生じます。

貸金業への参入条件の厳格化

1.貸金業への参入条件の厳格化

・ 純資産が5,000 万円以上であることを求める (施行後1年半以内に2,000万円、上限金利引下げ時に5,000万円の順に引上げ)
・ 法令遵守のための助言・指導を行う貸金業務取扱主任者について、資格試験を導入し、合格者を営業所ごとに配置することを求める

2.貸金業協会の自主規制機能強化 ・ 貸金業協会を、認可を受けて設立する法人とし、貸金業者の加入を確保するとともに、都道府県ごとの支部設置を義務づける

・ 広告の頻度や過剰貸付防止等について自主規制ルールを制定させ、当局が認可する枠組みを導入する

3.行為規制の強化

・ 夜間に加えて日中の執拗な取立行為など、取立規制を強化・貸付けにあたり、トータルの元利負担額などを説明した書面の事前交付を義務づける
・ 貸金業者が、借り手等の自殺により保険金が支払われる保険契約を締結することを禁止
・ 公正証書作成にかかる委任状の取得を禁止。利息制限法の金利を超える貸付けの契約について公正証書の作成の嘱託を禁止
・ 連帯保証人の保護を徹底するため、連帯保証人に対して、催告・検索の抗弁権がないことの説明を義務付け

4.業務改善命令の導入

・ 規制違反に対して機動的に対処するため、登録取消や業務停止に加え、業務改善命令を導入する

ヤミ金融対策の強化

ヤミ金融に対する罰則の強化(懲役5年→10年)
※ 超高金利(109.5%超)の貸付けや無登録営業などが該当

多重債務者問題に対する政府を挙げた取り組み

・ 政府は、関係省庁相互の連携強化により、多重債務問題解決のための施策を総合的かつ効果的に推進する

経過措置

1.施行スケジュール

・ 罰則の引上げ ・・・ 公布から1 ヶ月後

・ 本体施行 (取立規制の強化、業務改善命令導入、新貸金業協会設立など) ・・・ 公布から1 年以内

・ 貸金業務取扱主任者の試験開始
・ 指定信用情報機関制度(指定の開始)
・ 財産的基礎引上げ(2千万円) ・・・以上3項目 施行から1年半以内

・ 本体施行(再掲) ・・・ 公布から1年以内

・ 「みなし弁済」廃止、出資法上限金利の引下げ 等(金利体系の適正化の1.〜3.)
・ 総量規制導入 施行から2年半以内
・ 財産的基礎引上げ(5千万円)
・ 事前書面交付義務導入 ・・・以上4項目 施行から2年半以内

2.見直し規定

・ 貸金業制度のあり方について、施行から2 年半以内に、総量規制などの規定を円滑に実施するために講ずべき施策の必要性について検討を加え、その検討の結果に応じ て所要の見直しを行う。
・ 出資法及び利息制限法に基づく金利規制のあり方について、施行から2 年半以内に、出資法及び利息制限法の規定を円滑に実施するために講ずべき施策の必要性につい て検討を加え、その検討の結果に応じて所要の見直しを行う。